◇番外編:アニマル最強選手権
全世界に動物をこよなく愛す人々は星の数ほどいる。
その中でも動物を愛し過ぎてしまったが故に<自分も動物になりたい>そう思う変わり者。
彼らは人間と変わらぬ生活習慣を持ち、仕事を持ち、家庭を持つ。
だが多くの人間と大きくかけ離れているのが闘争心、そう最強への拘りであった。
だが、そんな彼らは常に現代社会に不満があった。
最強への拘りをいくらもとうと、今の社会がそれを許す事はない。
彼らの願望は水面下で確実に否定されていた。
そんな中、企画された四年に一度のアニマル最強選手権。
アニマル趣向をもつ人々が集い、その中でアニマル人最強を目指す。
だが通常の人々は生涯を通しても決してしる事のない小さな小さな大会。
そのスポンサーは某大企業の社長、某スポーツメーカー等々 社会的上流階級の闇の娯楽として認知されるようになった。
ある程度の力がつけば、練習場所、コスチュームにファイトマネー。
その辺りは一般社会のスポーツ大会、k−1やボクシング、プライドなどの大差はなかった。
さらにこの大会は男女別々に協議が行われる事はない。
動物界ではメスがオスを殺し、食う事もありえる。
なので、男女とも平等に扱われた。
年齢を問わず、性別を問わず。
だが、この企画が持ち上がった当初、やはり豹娘と同様に豹男も存在し同じ武器を使うと必ずしも男側が勝ってしまう。
それではゲーム性がないとスポンサー側からのクレームが大会によせられ、男は一切の武器を持つ事を禁じられたが女側は通常通り武器の使用を認められた。
だが、武器というのは人間の道具。
やはりアニマル趣向のある人々は道具を使うのは人間だ。
そう考えるのは当たり前の事であるがために、武器の使用が求められていても鉄などで作られた軽量爪やシッポ代わりに鞭、時に蜘蛛女たるものが現れ糸などを使っていたが、彼女らが本能的に使う武器は限られていた。
だが、アニマル女性にもスポンサーを払う企業などが増えアニマル女性も立派なアニマル選手として成長していった。
そんな中で、初のアニマル女性優勝者がでた。猫娘といわれる小柄の女の子だ。彼女の武器は爪のみであったが、アニマル選手の単調な殴り合いや押さえ込み噛み付きなどと違い彼女は初めてプロレスを導入した新しいタイプのアニマル選手であった。
何年か前に彼女のスポンサーになった企業がプロレス団体PDWAであった。
格闘会の初のアニマル選手権のスポンサーでもあった。
やはり通常の格闘会についてる企業などはアニマル選手権を邪道なスポーツとして扱っていた。
が、PDWAは斬新な新しい形のプロレス団体であるがためにアニマル選手権をそう毛嫌いするような事はなかった。
彼らはゲージと呼ばれる特殊なリングをアニマル選手権のために寄付し、場所も提供した。
しかし、競技の性質上一目につかない山奥で音も一切もれず、万が一音が漏れたとしてもカバー出来る場所という所で、レスリングの強化合宿施設の地下にゲージと大会の場所が設置された。
そして猫娘はこの大会優勝後にPDWAの選手として何年後かにスカウトされる。
PDWAは異質の選手の起用に成功したと言える。
大会一年前、、、、、、、、、、
「はぁ、、、、、はぁ、、、、」
猫娘は日々のハードな練習を黙々とこなしていた。彼女は数年前にアニマル選手権最年少で出場した。
しかし、右も左も分からない彼女はただただ相手に殴られ引っ掻かれボコボコにのされてしまった。
彼女をそこにおいやったのは、犬男。
その時の大会の優勝者であった。
犬男には多くのスポンサーがついていた。
さらに、ただ本能だけでは戦わず相手の体力、能力を見極めた上でじっくり嬲り殺しにかかる頭の切れるアニマル選手であった。
例外無く、猫娘は全くの素人で戦い方を知らない猫ちゃんとしてタップリいたぶられたのだ。
「猫娘、調子はどうだ?」
と話しかけるのはPDWA の会長たぬき氏だ。
なぜ猫娘のスポンサーについたのか。
ただ弱いだけの選手にスポンサーが着くというのは、ただただ金をドブに捨てる行為と同じであった。
しかし、試合中に猫娘が犬男から逃げようとジャンプした跳躍力に条件反射の能力、さらに体の重心を旨く利用した完璧といって良いほどのバランス感覚。
それを試合会場に来ていた、タヌキ氏はみやぶった。
(この娘は育つな)
そういったタヌキ氏の目に狂いはなかった。
猫娘はプロレスを1から学んだ。彼女に技のセンスはなかったが、常人をしのぐ脚力と動きの速さは十分にそれをカバーした。
唯一あげるならば、彼女の弱点は打撃攻撃といったところだ。
小柄故に、体重が旨く手に乗らずパンチ力があがらなかった。
しかし、絞め技、間接技は展開の早さと持ち前の脚力で得意分野となっていったのだ。
(もしかしたら、既にうちの何人かのレスラーよりかも強いかもしれないな、、、)
そう感じた、タヌキ氏は猫娘に次の大会に出る様に促したのであった。
「赤コーナー!!!!虎娘ぇぇええええ!!!」
パチパチパチパチ
何人かのスポンサーが手を叩いて拍手した。
「青コーナー!!!犬男!!!」
わぁぁぁぁぁぁ!!!!!
ともの凄い歓声があがった。
収容人数50人を満たないこの場所で30人ほどが大きな声をあげたため、しばらく地下のゲージ競技場に声が木霊した。
会場の角の方でジッっと試合の流れを見ようとする真剣な猫娘の顔があった。
この試合のどちらかが、私と決勝戦で対決する。
だが、猫娘の中で答えは出ていた。
この試合、必ず犬男が勝つ。
「おらぁぁ!」
ばきぃ!!!!!
虎娘の腹を思いっきり殴りニヤついてる姿があった。
はっはっはっはっ、、、、、と彼は犬の様にベロを出し、息をしている。
虎娘は腹を抑えながら立ち上がろうとすると、それを阻止すべく犬男が虎娘の上にまたがりワンワンと言いながら首筋あたりに噛み付いた。
虎娘も必死で犬男のしたで抵抗を試みるがむなしく終わった。
そう、彼女は負けを宣言したのだった。
アニマル選手権はとにかく回転が速い。
次々に選手が代わり、各々の判断で試合がドンドン開始されていく。
最短時など、30秒かからずに試合が終了することもある。
それほど、ルールを無視した本能の赴くままの戦いがゲージの中で行われている。
虎娘の肩辺りからは血が流れ、大きなアザが体中に無数にあった。
同じネコ科だからか猫娘は
「殺してくるニャン♪」
そう笑みを浮かべ、虎娘にすれ違い様にいうと、猫娘はゲージへと入って行った。
「赤コーナー!!!!犬男ぉぉぉ!!!!!」
わぁぁぁぁぁ
またゲージを含めた会場全体に何ともいわれぬ言葉達が木霊した。
「青コーナー!!!!猫娘ぇぇ!!!」
虎娘の時と同様に何人かのスポンサーが手を叩いた。
「あれれ?猫娘って前の大会で俺がメタメタにしてやった奴だよなぁ??」
はっはっはっ、、、、と息づかい荒く猫娘の方に寄って行く。
「またやられてぇのかぁ?えぇ!?」
と舐め回す様に猫娘を見た。
「まぁ、決勝までこれたって事は俺を結構楽しませてくれるのかなぁ??あぁ?じゃぁ、いくぜぇ!!」
犬男の話し方ははっきり言って汚い。唾をあちこちに飛ばし、滑舌が悪い。
「リベンジ行くニャン♪」
というと、猫娘は一気に犬男の頭上あたりまで飛び上がった。だが、犬男も4年間遊んでたわけではない。
猫娘の位置を完璧に把握し、落ちて来た所にパンチを合わせたつもりであった。
が。猫娘はそのパンチを空中で受け止め、さらに犬男の腕をそのまま自分の方にひっぱり、膝蹴りを顔面に合わせた。
バキっ!!!
鈍い音が鳴り犬男はその場に倒れた。
「くっ、、、くそぉ!!」
追い打ちをかけられないように、素早く犬男は跳ね起きた。
「んっ??」
犬男は猫娘を見失った。
そして、次の瞬間、猫娘は背後からオンブされるように犬男にしがみついた。
「まずは、視覚ニャン♪」
というと、背後から手を回し男の顔面を爪で掻きむしった。
「うわぁぁぁ!!」
犬男は情けない声をあげ、思いっきり回転肘を繰り出し、それは猫娘をとらえ猫娘は地面へと吹っ飛んだ。
しかし、この攻撃は決定打であった。
男の目は潰れてはいないものの、何かゴミが目にはいったような感覚。
ちょうどサミングを食らったような状態になったのだ。
「ふふ、、、、ちょっと遊ぶニャ♪」
おもむろに猫娘は内側からゲージを上り始めた。
そして、ゲージの天井まで到達しさらに天井を移動して男が丁度自分の真下に来る位置で止まった。
未だに犬男は顔抑えて痛がっている。
「んふっ、、、」
静かな声で猫娘は笑い手を話した。
空中で猫娘は正座するような形になり、膝が真下に来る様な体制で落ちて行った。
しかし、犬男は上からまさか攻撃してくると思わず防御は常に正面を向いていた。
「いただきニャ☆」
ばきぃぃぃぼきぃぃぃ
と鈍い音がした。
そう、猫娘の両膝が男の両肩に上からめり込んでいたのだ。
「ぐはぁぁぁぁぁ、、、、、、」
犬男は脱臼し、逃げ場のないゲージの中で逃げ場を求めて狼狽え始めた。
そして、ゲージの恥により、よりかかった。
「くっそぉ、、、、なんだってんだ、、、、猫野郎なんかに負けるか!」
と言うとほぼ同時に
「口だけはぃくないニャン☆何も言えないようにしてやるにゃ♪」
といい男に肩車するような形で犬男の首に太腿を絡ませた。
「空中ニャンニャン四の字くらえニャン☆ 」
とゆうと、猫娘は肩の上で首4の字を構築しグググググと後ろに上体をそらし逆立ちするように手を伸ばして男の膝裏あたりを手で持った。
犬男は
「ふぐっ!」
と奇怪な声をあげ倒れそうになるがゲージがすぐ後ろにあるせいで男の脳天がゲージの網にぶつかり男は前に倒れる事も後ろに倒れる事もゆるされなかった。
「苦しいのかにゃ??ギブアップしたらどうニャ?」
ぎゅううううううううううううう!!
猫娘はさらに太腿を食い込ませる。
この常人を超える脚力に締め上げられ、何も言葉を発する事ができない犬男。
「苦しくないのニャ?じゃぁ、もっといくニャ!!ふんっ!!!」
ぎゅううううううううう!!! ぐぐぐっ!!!!!!
「ブクブクブクブク、、、、、、」
犬男が泡を吐くと、猫娘はニャンニャン四の字から犬男を解放した。。。
うわああああっ!!!!!!!!
歓声があがった。
この歓声は会場全員が猫娘にむけてのものだ。
猫娘は照れて、後ろ髪をポリポリといじっている。
犬男は救護班がきて担架で医務室に運ばれていった。
ゲージから出ると、虎娘が泣きながら猫娘に抱きついて来た。
多分、同胞が自分の敵を討ってくれた。そういう風に感じたのだろう。
さらに大会始まって以来の初の女性アニマル優勝者とだけあっていつまでも歓声がやむ事はなかった。
犬男のスポンサーであった彼らも新しい斬新なアニマル選手の出現に開いた口が塞がらなかった。
猫娘は新しい息吹をこの小さな大会そして小さな会場にもたらしたのだ。
その後のアニマル選手権は今までとルールは全く変わらないが、選手のあり方が変わったのだ。
格闘技を取り入れ、より実践的で野性的な技の開発に日々研究した。
女の選手達のあり方が特に変わり始めた。
女でもトップになれるという実際の例と猫娘という特殊な武器をもたない女の子が実力だけで勝ったというのは多くのアニマル女性選手に影響を与えた。
<空中ニャンニャン4の字>などはさらに改良に改良され脱出不可能の<空中トラトラ四の字>などが現在注目を集めているようだ。
次回の優勝はあの虎娘ではないかという声も高く、ネコ科アニマル最強説などが浮上してきている。
そんな中、犬男はあの試合の後に腕を検査した所完璧に両肩が逝かれてしまっていた。
彼は復讐に燃え、何やら怪しげな団体??名称等は未だに分かっていないがPDWA と猫娘を潰すための組織を今作っているとかいないとか。。。。
番外編:アニマル最強選手権/おわり
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