◇ももこ 締め技地獄 1

PDWAの道場では、ももこたちが練習を行っていた。
「ももこ、話によると、今度のシリーズに外人が参戦するみたいだよ」
「ふ〜ん、外人ねえ……どんな人かな?」
「まあ、どんな奴が来ても、全力で戦うまでだけどな」
ももことMIKAはそんな事を言いながらも、参戦する外人のことを想像しながら、練習を続けた。
そして練習を終えた後、道場に冴子がやってきた。
「みんな、今回参戦する選手を紹介するわ。入ってきて」
冴子がそういうと、一人の外人が入って来た。
「ハイももこ!久しぶりね!」
「ビアンカじゃない!」
参戦する外人とは、以前参戦したビアンカ・ホワイトだった。
「ももこたちは知ってると思うけど、ビアンカ・ホワイトよ」
「よろしくね」
ビアンカはみんなに挨拶をした。
その後、練習を終えたももことMIKAはビアンカの印象について話しあった。
「ももこ、ビアンカの奴、雰囲気変わったわね」
「そう?」
「そうよ。以前と比べて体格も大きくなってるし……試合では気をつけた方がいいと思うよ」
「大丈夫よ。以前のように勝利してあげるわよ」
ももこは以前ビアンカと対戦した時、持ち前の粘り強さでビアンカの猛攻を耐えきり、勝利したのである。
(そう同じ手が通じるとは思わないけどね)
MIKAは笑いながらそう返事したももこを見て、不安になってしまった。
そして、MIKAの不安は的中することになる。
後日、マッチメイクが発表された。
その結果、ももこはビアンカと対戦する事になった。
「気を付けろよ」
「大丈夫よMIKA」
MIKAの不安に、ももこは自信たっぷりにそう答えた。
パラダイス・アリーナ。
ももこは先にリングインしており、ビアンカの入場を待っていた。
「赤コーナー!ビアンカ・ホワイト選手!」
アナウンスを受け、ビアンカが入場してきた。
「え!嘘!まるで別人じゃない!」
ももこはビアンカの姿を見て驚いた。
以前試合した時、ビアンカのコスチュームは白を基調としたシンプルなものだった。
しかし、今回のビアンカのコスチュームは青を基調としたラフなものになっていた。
しかも、道場であった時はスーツを着ていたためよく分からなかったが、ビアンカの身体も以前と比べてボリュームアップしており、筋肉も逞しくなっていた。
(いいや!いくら筋肉を付けてもスピードは遅いはず!何とかなるわ!)
ももこはビアンカがリングインするまでの間そう思い、自分を奮い立たせた。
そして、リング中央でビアンカと対峙したが、約30cm差もある身長も加わって、ビアンカが脅威に感じた。
「ももこ、この前のようにはいかないわよ!」
「な!負けるもんですか!」
そして、試合開始のゴングが鳴った。
「行くわよ!」
ゴングが鳴ると同時に、ももこは先制のドロップキックを放った。
しかしビアンカはそれを避けようとせず、胸で受け止めた。
「きゃ!」
ももこはビアンカの胸に弾き飛ばされた。
「アラ、その程度?前より弱くなってない?」
「く!まだまだ!」
ももこは何度もドロップキックを放ったが、ビアンカは微動だにしなかった。
「はぁ……はぁ……」
「今度はこっちから行くよ!」
ビアンカはももこに向かって走り、ラリアットを放った。
「きゃあぁ!」
ももこは避ける事が出来ず、リングに一回転して倒れた。
「く……速い……」
「昔の私とは違うのよ!」
ビアンカはももこの足を取ると足4の字固めを極めた。
「ああぁぁぁ――――!」
「どう?昔受けたのとは段違いでしょ?」
ビアンカはそう言いながら、足4の字を強くした。
「ああぁぁぁぁ!!(確かに、以前戦った時とは力も極まり方も段違いだわ)」
ももこは苦痛に耐えながらも、ロープに向かおうとしたが、ビアンカの足4の字は強力で、リング中央から動く事が出来なかった。
そして、ビアンカは足4の字を解くとももこを起こし、ヘッドロックで締め上げた。
「ぐ……う……」
ももこはヘッドロックを外そうとしたが、ビクともしなかった。
「ほら!外せないでしょ!」
ビアンカはブルドンキング・ヘッドロックでももこを叩き付けた。
「ぐわ!」
更に、追い打ちでギロチンドロップを放った。
「げほ!」
ももこは喉を押さえて転がった。
「まだ試合は始まったばかりよ!」
ビアンカはそう言いながらももこを起こすと、ベアハッグで締め上げた。
「ぐわあぁぁ!」
ももこは懸命にもがいて逃れようとしたが、ビアンカのベアハッグはガッチリと極まっており、不可能だった。
「ほらほら!れいこ達とは格が違うでしょ!」
ビアンカはそう言いながらベアハッグを強めた。
「あぁぁぁぁ……」
ももこは次第に抵抗しなくなり、動かなくなっていった。
「ちょっと!まだこれからなのに!」
ビアンカは技を解くとももこをロープに振り、ラリアットを放とうとした。
「そうはいくか!」
ももこはそれをかわすと、ロープにジャンプして、セントーンを放った。
しかし、ビアンカはそれを受け止め、パワーボムで叩きつけた。
「ぐわ!」
ビアンカはフォールをせずにアピールを行ったため、ももこは叩きつけられたままの体勢を周囲に晒す状態になってしまった。
(強すぎる……これじゃももこは負けるぞ!)
セコンドのMIKAはそう思いながらも、リングから目をそらさずに試合を見ていた。
「ももこ、まだまだ行くよ!」
ビアンカはそう言いながらももこを起こし、コブラツイストをかけた。
「あぁぁぁ……」
そして、しばらくすると技を解き、ロープに振ると、ラリアットをお見舞いした。
「ぐわぁ!」
ももこはリングに叩きつけられた。
「まだまだ行くよ!」
ビアンカはそう言いながら、再びももこを起こし、アルゼンチン・バックブリ―カーでももこを反り上げた。
「うわあぁぁ……」
ももこはもがくことも出来ず、呻き声をあげるしかなかった。
「さあ!いくよ!」
ビアンカはしばらくアルゼンチンをしばらくかけた後、デスバレーボムでももこを叩きつけた。
「ぐは!」
ビアンカはももこに覆いかぶさり、フォールしたが、ももこは2・9で返した。
「はぁ……はぁ……」
しかし、ももこの受けたダメージは大きく、なかなか起き上がる事が出来なかった。
「ももこ粘るね!でも、これで終わりよ!」
ビアンカはももこをリング中央まで引きずると、その逞しい足でももこの首を4の字に絡め取った。
「ぐ……う……苦し!」
ヘッドロックを遥かに凌ぐ苦しみがももこを襲った。
「さあ、ギブアップ?」
ビアンカはそう言いながら、首4の字の力を強めた。
「かは……ぁぁ……」
ももこはビアンカの締め上げの前にロープに滲み寄る事も出来ず、足をばたつかせることしか出来なかった。
「ギブしないと、どんどん締めるわよ!」
ビアンカは更に締める力を強めた。
(あぁ……苦しい……こんなの……初めてよ……)
ももこは今まで味わったことのない苦しみの前に、次第に意識が朦朧としていった。
首4の字は試合で何度か掛けられた事がある。
しかし、ビアンカの首4の字は、それとは全く別次元の苦しみだったのである。
ビアンカの足は筋肉もさることながら、ムチムチでありながら柔らかかった。
そのため、ビアンカの首4の字はガッチリと隙間なく極まり、指を入れて防ぐことなど出来なかった。
おまけにビアンカはれいこほど関節に熟知していないため、頸動脈ではなく喉を締めており、それがももこに更なる苦しみを与えていた。
「あぁ……ぇ……」
ももこの意識は曇り始め、ばたつかせていた足も動かなくなっていた。
「流石ももこ、ヒール達に締め上げられていたから、よく粘るわね!でも、そろそろ限界じゃないの?」
ビアンカがそう言いながらももこの顔を覗くと、ももこの顔は青ざめ、苦しげに口を開き、端からは涎を垂らしていた。
(可愛い顔……れいこ達がももこに締め技を多用する理由が分かるわ……)
ビアンカは苦しむももこの顔を見て、ふとそんな事を思いながら締め上げる力を強めた。
「ぁ……ぅ……(苦しい……もうダメ……)」
規格外の締め上げの前にももこはついにギブアップをしようと思った。
しかし、ビアンカの締め上げによりももこの体は痙攣を起こし、手足を動かす事も出来なかったため、ギブアップをする事が出来ない状態だった。
「あぐぅぅ……ひ……」
そして、遂にももこの体から力が抜け、ももこは意識を失った。
それを見たレフェリーは2人に近づき、試合終了の合図を出した。
「勝者!ビアンカ・ホワイト!」
レフェリーに手を上げられ、ビアンカは勝利のアピールを行った。
一方、ももこはMIKAに抱えられ、控室に戻った。
「ももこ、大丈夫?」
「う……MIKA……ここは……」
「控室よ。あなたをここまで運んで来たのよ」
その話を聞いたももこは、自分が負けた事を知った。
「あたし……締め落とされたのよね……」
「あの首4の字、よっぽど苦しかったのね」
「ええ……まるで大蛇に締められてる気分だったわ……」
「じゃあ、れいこや樹璃異常って事?」
「ん〜……締め上げる力だけなら、2人とは比べ物にならないわね……」
ももこはしばらく考え込んだ後、そう言った。
「ちょっと!れいこが聞いたら怒るわよ!」
「大丈夫よ。ここはベビー側の控室だし……」
しかし、ももこは甘かった。
れいこはももこの控室の前に来ていて、さっきの話を聞いていたのである。
(ももこ……私の締め技の恐ろしさ、まだ分かっていないようね!)
れいこは携帯を取り出すと、ヒールの仲間に連絡を取った。

翌日、道場ではももことMIKAとトレーニングを行っており、リング中央ではMIKAが首4の字でももこを締め上げていた。
「ももこ!どう?」
「あぁぁ……く……」
ももこはMIKAの首4の字から逃れようともがいたが、首4の字はガッチリと極まっており、MIKAとの圧倒的な力の差も相まって、逃れる事は出来なかった。
「ももこ!早く外さないと落ちちゃうわよ!」
MIKAは両手をリングに付け、腰を浮かせて締める力を強めつつ、ももこを揺さぶった。
「うあぁぁ……ぁ……」
ももこは意識が朦朧としながらも、懸命にもがき続け、なんとか裏返し、首4の字から脱出した。
「ももこ!やればできるじゃない!」
「げほ!ごほ!ごほ!……でも、ビアンカじゃこうはいかないわよ……」
ももこは咳き込みながら、ビアンカとの試合の事を思い出していた。
「ビアンカはパワーだけじゃなくて、テクニックもそれなりにあるから……意外とボディコントロールが上手なのよね……」
「どうせ私は器用じゃありませんよ!」
ももこの話を聞いたMIKAは拗ねてしまった。
「ちょっと!別にMIKAは器用じゃないって言っていないわよ!」
「でも、ビアンカは私より器用なんでしょ?」
「それは……」
「そうなのね!ムキ―!今日は徹底的に締め上げてあげるわ!」
MIKAはももこに組み付き、スリーパーホールドで締め上げた。
「ちょっと!チョーク……」
「れいこにはいつもやられてるでしょ!私は遠く及ばないけどね!」
「く……この―……」
ももこは体を上手く動かし、MIKAの腕からすり抜けた。
「くそ!だったら!」
それから、MKAはももこに締め技を掛け続け、ももこはなんとかそれを耐えて外した。
練習後、2人はリング上に大の字に寝そべっていた。
「ももこ……これで少しは締め技に対する防御、強くなった?」
「MIKAだって……少しは器用になったでしょ?」
「何よ!少しは自分の心配をしなさいよ!」
MIKAはそう言いながらも、表情は笑っていた。
そして、それはももこも一緒だった。
しかし、その光景をドアの隙間から見ていた人がいた。
樹璃であった。
(フフフ……楽しんでいるのも今のうちよ!明日は締め技地獄を味あわせてあげるからね!)
樹璃はそう思いながら、道場を後にした。

翌日、ももこは道場で1人、リングコスチュームで練習を行っていた。
「やっぱ、試合用のコスチューム着ると気持ちが引き締まるわね」
「ちょっといいかしら、ももこ?」
そこへ、リングコスチュームに着替えた樹璃が入って来た。
「樹璃、何の用?」
「ももこ、あの試合の事だけど、ビアンカに締められて気持ちよかったかしら?」
「な!何言いだすのよ急に!」
「だって……あんなにいい顔してたんですもの……でも、私達がいつも気持ちよくしてあげてるのに、ちょっと許せないわね……」
「何が言いたいの?」
「今から私とリングで練習試合してもらいたいのよ。引き受けてくれる?」
「その格好だと、断っても無理やり試合するつもりでしょ?いいわよ」
ももこは樹璃の要求を受け入れた。
(掛かったわ!)
樹璃がそう思いながら舌なめずりをした事に、ももこは気付かなかった。

リングに上がった2人はそのまま中央で組み合った。
「あたしだって、締め技のトレーニングをしてるんだからね!」
ももこは樹璃の背後にまわり、スリーパーホールドで締め上げた。
「く……確かに少しは極まりがよくなったわね……でも!」
樹璃はももこのみぞおちにエルボーを放ち、脱出した。
「げほ!ごほ!」
ももこはみぞおちを押えて蹲り、その隙に樹璃は背後に回り込んだ。
「私達のと比べたら、全然ですわよ!」
樹璃はももこの首に腕を回し、スリーパーで締め上げた。
「ぐ……あぁ……」
「ほらほら!これが真のスリーパーですわよ!」
樹璃はそう言うと、チョークスリーパーに切り替えた。
「あ……チョーク……」
「バカね!PDWAではチョークは反則にはならないわよ!」
樹璃は笑いながらそう言うと、チョークスリーパーを強めていった。
「あぐく……うぅ……」
ももこの顔は次第に青ざめていき、抵抗していた腕も力なく下がっていった。
「ほらほら腕が落ちたわよ。このままじゃあ落ちちゃうわよ〜?」
「あ……ひ……」
ももこの意識は霞み始め、樹璃の挑発にも反応しなくなっていた。
「ちょっと!まだ落ちないでよね!あなたは私の太ももで眠ってもらうんだから!」
樹璃はスリーパーを解き、ももこの意識が回復するのを待った。
「ごほ!げほ!がは!」
技を解かれたももこは激しく咳き込み、意識を回復させた。
「(そろそろいいわね)じゃあ、これで気持ちよく眠らせてあげるわ!」
樹璃はももこを蹴って仰向けにすると、その美脚をももこの首に巻きつけ、首4の字で締め上げた。
「んぐ!あぁぁ……」
「ほら!ビアンカよりも苦しいでしょ?」
樹璃はそう言いながら、締める力を徐々に強めた。
「あぐ……ふぅ……(どっちも苦しいけど……こっちは……)」
ももこは再び意識を失いそうになりながらも、樹璃の言った事を考えた。
ビアンカは豊満な足で力任せに締め上げるため、大蛇に締められている感じ。
一方樹璃はテクニックで確実に締めるため、ロープで締められている感じであった。
「まぁ、私はももこが苦しめば、どっちでもいいけどね。さあ!眠りなさい!」
樹璃は両手をリングに付け、腰を浮かせてももこの首を締め上げた。
「があぁぁぁ……」
ももこは白目をむき、口から泡を吹いて意識を失った。
「落ちた顔、とっても可愛いわね。さあて、あなたにはまだまだ締められてもらうからね」
樹璃はももこを抱えると道場を後にし、た。

ももこ 締め技地獄2へ続く

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